ウォーキングが体にいい、ということは、もう何十年も前から知っていた。
でも「知っている」と「やっている」は、全然別の話だ。50代に入るまで、僕はずっと「知っているけどやっていない」側の人間だった。それが変わったのは、去年の健康診断がきっかけで。あれから約1年、気づいたら毎日歩くのが当たり前になっていた。
体重が劇的に減ったとか、筋肉がついたとか、そういうドラマチックな話じゃない。でも、日々の生活が少しずつ、じわじわと変わってきた。今回はその話を、正直に書いてみようと思う。
正直に言うと、始めたのは「焦り」からだった
健康診断の結果を見て、さすがにまずいと思った
去年の健康診断で、血糖値と中性脂肪の数値に引っかかった。「要経過観察」という文字を見たとき、なんとなく予想はしていたんだけど、やっぱりこたえた。体重はその時点で82kg。身長172cmだから、BMIで計算すると27.7。立派な「肥満」の入口だ。
お酒もたまにしか飲まないし、食事もそこまで暴飲暴食はしていない。でも50代というのはつくづく恐ろしくて、以前と同じように食べているだけで、気づいたら増えていく。基礎代謝が落ちているから、若い頃のやり方がそのまま通用しない。
「このまま何もしなかったら、還暦あたりでまずいことになりそうだ」と、珍しく素直に思えた。焦り、というか、ちょっとした恐怖だったかもしれない。
ジムは続かなかった。ランニングは膝が痛かった。残るのは「歩く」だけだった
実は健康診断でひっかかったのは今回が初めてじゃない。数年前にも同じようなことがあって、そのときはジムに入会した。最初の1か月は通ったんだけど、だんだん面倒になってきて、気づいたら月2,000円の「幽霊会員」になっていた。解約するのも惜しくて、ずるずると半年。あの経験はなかなか苦い思い出だ(苦笑)
ランニングも試した。膝を壊したのは3週間後だった。中年の体は、正直、急激な負荷に向いていない。
消去法で残ったのが、ウォーキングだった。特別な道具もいらない。会費もない。膝への負担も、走るより圧倒的に少ない。「まぁ、歩くだけなら続くかもしれない」という、あまり熱くない動機で始めたのが正直なところだ。
最初の1か月は、思ったより地味だった
体重はほぼ変わらない。でも、なぜか続けていた
最初の目標は「1日30分、週5日」にした。毎晩、夕食後に近所を一周するコースを決めて、歩き始めた。距離にして2〜3kmくらい。歩数計アプリをスマホに入れて、毎日記録するようにした。
1か月後の体重は、81.2kg。0.8kgしか減っていない。
正直、がっかりした。「こんなもんか」と思った。でも不思議なことに、やめようとは思わなかった。なんでだろう、と今でも考えるんだけど、たぶん「体重以外の何か」が少しずつ変わっていたんだと思う。
歩きながら考え事をするのが、だんだん好きになっていった
歩いている間は、基本的に何もできない。スマホをいじることもできないし、テレビも見られない。最初はその「暇さ」が苦痛だった。
でもある日、ぼんやりしながら歩いていたら、仕事の悩みがふっと整理されていることに気づいた。何かを「考えよう」としたわけじゃない。歩いているうちに、頭の中がゆっくり動いていた感じ。
ウォーキングって、思考の整理に向いているんだな、と気づいてから、少し楽しくなってきた。夜の30分が、なんとなく「自分のための時間」になっていった。
歩数アプリの「達成」マークだけが、小さな自信だった
歩数計アプリが毎日「目標達成!🎉」と表示してくれる。これが意外と効く。「今日も達成した」という事実が積み重なっていくと、やめるのがもったいなくなってくる。
ゲームの「ストリーク」と同じ原理だと思う。連続記録が途切れると悔しいから、雨の日も少し歩く、疲れた日も10分だけ歩く。そうやって続いていった。
2〜3か月で、体と気持ちがじわじわ変わってきた
睡眠の質が、静かに上がっていった
2か月を過ぎたあたりから、夜の眠りが変わってきた。以前は布団に入っても30分くらい眠れないことが多かったんだけど、歩き始めてからは、割とすんなり眠れるようになった。
深夜に目が覚めることも減った。妻から「最近、よく眠れてるんじゃない?」と言われたのは、歩き始めて3か月目くらいだったと思う。言われるまで自分では気づいていなかったけど、確かに朝の目覚めが少しだけ軽くなっていた気がする。🌅
これは後から調べてわかったことだけど、ウォーキングのような軽い有酸素運動は副交感神経を優位にして、睡眠の質を改善する効果があるらしい。「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンも分泌されて、それが夜になるとメラトニンに変わって快眠を促すとのこと。体の仕組みとして理にかなっているんだな、と納得した。
体重は2kgしか減っていないのに、なぜかズボンが緩くなった
3か月後の体重は80.3kg。正直、思ったより減っていない。でも不思議なことに、以前はきつかったウエスト34インチのズボンが、するっと入るようになっていた。
体重の数字は変わっていないのに、体の見た目と感触が変わる。これが「体組成が変わった」ということなんだろうな、と思った。脂肪が落ちて筋肉がついてきているから、体重のわりにサイズが変わる。ウォーキングをなめていた、というか、数字だけ見ていたらわからない変化があった。
朝の気分が、少しだけ前向きになった気がする
これは数値にできない変化だから、自分でも「気のせいかな」と思っていたんだけど、最近は確信に変わってきた。
以前は朝起きると「あぁ、今日も仕事か」という感じで、頭が重くてなかなかエンジンがかからなかった。それが最近は、朝食を食べながら「今日はどのルートで歩こうかな」と考えている自分がいる。夜の散歩の楽しみができたことで、一日の終わりが少し楽しみになっているのかもしれない。
50代に入ってから、「老後が不安」「お金が足りるか」「体が心配」という暗い思考が頭を占領することが増えていた。ウォーキングがそれを解決したわけじゃないけど、歩いている30分だけは、その不安が少し遠ざかる感じがある。
半年続けたら、思わぬ波及効果があった
外を歩くと「お金の使い方」が変わってきた 💰
これは完全に予想外だった。
歩くようになって、近所の地図が頭の中に入ってきた。「あそこに公園があったんだ」「この道を行くとこんなところに出るのか」というように、自分の生活圏が広がる感覚がある。
同時に、スーパーや商店街に自然と立ち寄るようになった。すると、徒歩で行ける範囲にいい店があることを発見した。以前は車や電車で少し離れたショッピングモールに行くことが多かったけど、近所の個人商店で買い物する機会が増えた。なんとなく、お金の流れが変わってきた気がしている。
あと、コンビニに立ち寄る頻度が減った。歩いている最中はコンビニに入る気分じゃないし、歩き終わった後は「ここまで歩いたのにコンビニで余計なものを買いたくない」という心理が働く。月のコンビニ支出が、体感で3〜4割は減った気がしている。細かい話だけど、これは地味に大きい。
妻と一緒に歩くようになって、話す時間が増えた
最初は一人で歩いていた。でも4か月目くらいから、週に2〜3回、妻が一緒に歩くようになった。「私も歩いた方がいいし」と言って、なんとなく合流するようになったんだけど、これが意外とよかった。
歩きながらする会話って、向き合って話すのと少し違う。顔を見合わせないから、なんとなく話しやすい。老後のこと、子どものこと、お金のこと。重い話でも、歩きながらだと少しだけ話しやすい気がする。
50代の夫婦って、改まって「さあ話そう」という機会が意外と少ない。テレビを見ながらか、食事中か。でも歩きながらだと、ゆっくり話せる。思わぬ副産物だった。🚶♂️🚶♀️
「何かを続けている自分」が、他のことにも効いてきた
これはちょっと抽象的な話になるんだけど、半年間続けてきた中で「あ、自分、続けられるじゃないか」という感覚が生まれてきた。
50代になってからは、何かを新しく始めることへの腰が重くなっていた。「どうせ続かない」「また途中でやめるだろう」という諦めが先に来る感じ。それがウォーキングを続けることで、少し変わってきた。
ウォーキングで「続けられた」という実績が、他のことへの自信につながっている。家計の見直しを本気で始めようと思えたのも、禁酒に踏み切れたのも、なんとなくウォーキングのおかげな気がしている。因果関係は証明できないけど、「変われる」という感覚は、案外大事なものだと思う。
ウォーキングが続いた理由を、冷静に分析してみた
ハードルを極限まで下げた——「5分でいい」と決めた
続けられた一番の理由は、これだと思っている。
「今日は疲れているから無理だ」という日でも、「5分だけ外に出る」というルールにした。5分外に出てしまえば、大体そのまま20〜30分歩いてしまう。でも「やっぱり今日は5分で帰ろう」と判断したら、5分で帰っていい。それでもゼロではない。
「完璧にやらなくていい」と思えると、休んだ日が「失敗」じゃなくなる。この考え方の転換が、続ける上でかなり重要だった。
記録することで、やめる理由がなくなっていった
スマホの歩数計アプリ(僕はiPhoneのヘルスケアアプリをそのまま使っている)で毎日記録している。グラフで積み上がっていくのが見えると、「ここでやめるのはもったいない」という気持ちになる。
別に誰かに見せるわけでもないし、プレッシャーというよりはゲームに近い感覚。記録を続けるための歩き、という構図になっている。
完璧を目指さなかったから、続いた
雨の日はサボった。体調が悪い日も休んだ。出張が続いて1週間ほとんど歩けないこともあった。
でもそういう「穴」があっても、「もうおしまい」とはならなかった。「また明日から再開すればいい」と軽く考えられたのが、続いた理由だと思っている。
完璧じゃなくていい。週に5日歩ければ十分だし、週に3日でも、ゼロよりずっとマシだ。この「ゆるい基準」が、長期的に続けるコツだったのかもしれない。🌿
1年近く続けた今、ウォーキングについて思うこと
「健康のため」から「自分のための時間」に変わった
始めたときは「健康のためにやらなきゃ」という義務感があった。でも今は少し違う。
夜に歩く30分が、一日の中で唯一「何もしなくていい時間」になっている。仕事のことも、お金のことも、老後のことも、全部棚上げして、ただ歩くだけの時間。その感覚がいい。
正直、これほど「自分のための時間」になるとは思っていなかった。もしかしたら、50代の僕が一番必要としていたのは、激しい運動じゃなくて、何も考えずに歩く時間だったのかもしれない。
これを老後の基盤にしようと、本気で思い始めた
老後の不安の一つに「体の問題」がある。要介護になったらどうするか、医療費がどれだけかかるか。でも逆に言えば、健康でいられれば、その不安はかなり小さくなる。
ウォーキングを続けることが、老後の医療費を抑えることにつながるかもしれない。NISAや資産運用も大事だけど、体を資産と考えて投資するという視点を、去年初めてリアルに持てるようになった気がしている。
年間コストはほぼゼロ(靴は一足買い替えたけど)。時間は1日30分。これで睡眠の質が上がって、気分が前向きになって、夫婦の会話が増えて、コンビニ支出も減るなら、コスパはかなりいいんじゃないかと思っている。
まとめ
ウォーキングを始めて、劇的に変わったものは何もない。体重も2kgちょっとしか減っていないし、見た目が大きく変わったわけでもない。
でも、じわじわと変わってきた。睡眠の質、朝の気分、お金の使い方、妻との会話、「続けられる自分」という感覚。そういう地味な変化が、半年・1年のスパンで積み重なっていくと、気づいたら「以前より少しいい状態」になっていた。
ウォーキングを勧めたい、とは言いにくい。人によって合う合わないがあるだろうし、僕自身がまだ途中の話だから。ただ、50代の自分には、「続けやすい運動」と「考える時間」の両方が必要だったんだな、とは思っている。
あなたにとって、その「ちょうどいい運動」は何だろう? そんなことを考えながら、今夜も歩いてきます。
次回は、禁酒を始めて3か月で気づいたこと——ウォーキングと禁酒は意外と相性がいいかもしれない話を書こうと思います。


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